偏差値の上がる話の第一回目では、大原則からお話ししましょう。
まず、あなたの最終的な目標は志望大学に合格することであって、偏差値を上げることは、その最終目標に至るためのひとつの中間目標にすぎないということをしっかりと認識することが大事です。志望大学に受かるための勉強と、偏差値を上げるための勉強とは、似て非なるものです。ごく簡単にいえば、前者は過去問分析によって大学の傾向に合わせた対策が必要であるのに対し、後者は各科目の基礎の底上げとその運用を主眼とした勉強です。前者を過去問対策、後者を偏差値を上げる勉強法と呼ぶことにします。
そこで、こう考えてください。
まず、あなたの偏差値と志望大学の大学偏差値との差を5以内に縮めるよう、基礎の底上げを図ってください。たとえば、志望校の大学偏差値が60である場合、あなたの偏差値を55以上に上げるように、基礎の定着を図る。
その後、過去問対策にシフトして、基礎知識を確認しつつ、志望大学に合わせた勉強を行う。あなたの偏差値と志望校の大学偏差値との誤差が5以内であれば、過去問対策を十全に行うことによって逆転合格も夢ではありません。なぜなら、そうすることで、あなたは志望校が要求する知識・学力を身につけることができるからです(たとえあなたの偏差値が模試の定めるボーダー・ラインに達していなくとも)。逆に、あなたの偏差値が志望校の大学偏差値を超えていたとしても、それはあなたが志望校が要求している知識・学力を身につけたことを必ずしも意味するわけではありませんよね。
要するに、偏差値を上げることに必要以上にこだわらないこと、これが大学受験を効率よく切り抜けていくための前提となります。
さて、効率と言いましたが、過去問対策だけでなく偏差値を上げる勉強にも、効率という視点は大切です。言うまでもなく、偏差値は相対評価なので、あなたが偏差値を上げるためには、ライバルの上を行かなければならない(あるいは、ライバルの点数を何らかの方法で下げるか←よさないか)。そうするためには、人より努力の量を増やすか、人より効率よく勉強するか、あるいは、その両方が必要になってきます。少ない時間で合格するだけの学力を身につけるには、正しい方法で効率よく勉強していく方が賢明ですよね。
偏差値を上げる勉強における効率とは、ひとえに記憶効率のことを指します。ぼくは大学受験に地頭の良し悪し(あるいは、IQ)はそれほど関係がないと思っています。大学受験なんて大学が要求する知識を記憶すれば受かってしまいます。大学に合格するのに天才的なひらめきなんて必要ありません(あればそれに越したことはないけれど、ものを覚えるのにひらめきは特に要らない)。要は、覚えたか、覚えなかったかの問題です(思考系の科目と言われている現代文でさえ、5割は記憶だとぼくは考えています)。
たしかに、知能指数と記憶力の良さとの間には何らかの相関関係があるのかもしれません(IQの高い人は記憶力にもすぐれているかもしれない)。でも、地頭の性能が多少劣っていても、記憶なんてものは技術でなんとかなります。で、その記憶の技術を次回からご紹介しましょうということで、今回の偏差値の上がる話でした。